ハルジオン。

「いい匂い」

「良かった」

靖之は満足そうに頷くと、ズボンのポケットから指輪を取り出し、それを達也に投げて寄こした。

「これ……」

達也が眉をひそめる。

「本当はね、たっちゃんを出し抜いてプロポーズするつもりだったんだ」

「え?!」

ウソ、と百合子が靖之を見た。

その肩越しに達也も息を飲んでいる。


「でも止めた」

靖之はあははと笑い、薄いジャケットのポケットに両手を突っ込んだ。