ハルジオン。

「……ゆりちゃん、大丈夫?怪我は?」

「うん、平気」

胸元を隠して立ち上がり、目を伏せたまま百合子が答える。

「今すれ違った男と何かあったの?手から血が出てたけど」

「ん……でももう大丈夫だから」

「そう……」

「……」

ダメ。

凝視できない。

百合子は無性に喉の渇きを覚え、何度も小さく唾を飲み込んだ。

どんな顔をすればいいのか、

何を言えばいいのか。

戸惑う一方で、少し離れた戸口に立つ達也のことが気になってしかたがなかった。