「……百合子」

「ひ……」

咄嗟に体を捻り、後ろ手にずり下がる。

とん、と肩に壁が触れた。

行き止まり――

気付いた途端、翔の手が百合子の髪をわし掴んだ。

「ゆり、一緒に帰ろ。な」

百合子の耳元に荒い鼻息を寄せ、甘えた声で翔が囁く。

「……嫌」

百合子は首を横に振った。恐怖のあまり歯がガチガチと鳴る。

「なんで?」

「……翔」

「何でなんだよッ?!」

ガラリと声色を変えた翔の顔が、再び狂気に歪んでいく。