「嫌……来ないで」

引きちぎられた胸元をかき抱き、百合子は冷たいコンクリートを後ずさった。

「お願い……」

「何がお願いだよこの野郎!」

――パンッ!

「あっ」

乾いた音と共に左頬に鋭い痛みを感じ、百合子は短い悲鳴を上げた。

そしてもう一発。

今度は反対の頬をぶたれ、百合子はガクリと項垂れた。

ぐわんと耳が鳴る。

視界が霞む。

暗闇の中で、表情を失った翔の顔がゆらりと揺れた。