(三)


薄暗い山車小屋の中で、百合子は懸命に身をよじり、覆い被さってくる男……翔を睨みつけていた。

「ゆり……そんな怖い顔で俺を睨まないでくれよ」

「嫌……」

「待てよ」

ニヤリと口元を歪ませ、翔が百合子の白い頬を指で撫でる。

「……帰って」

「あ?」

「帰って!」

声を震わせながらも、百合子は毅然とした瞳で翔を見上げた。

「ねえ翔……お願いだから」

「無理だね」

翔の残忍な顔が迫る。