「……行こう」

踵を返し、家の門を後ろ手に閉めると、靖之は花束を抱えて歩きだした。


玉砕するのは分かっている。

百合子の心の中には、いつだって必ず達也がいた。

彼女が見ているのは自分じゃない。

……それでいい。

それでいいんだ。

これはケジメだ。

ずっと抱えてきた思いへの、自分なりの決着を付けに行くのだ。

そう……

「これでいい」

靖之は心の中で頷き、神社に向かう逆瀬川の土手を歩いた。