ハルジオン。

転校生はもう一人いた。

靖之よりも頭一つ背が高い少年だった。

少年は一人黙々と校庭の隅の木に登り、いつも空を眺めていた。

達也だった。



達也はボロボロの服を着て、「もぐら」などと呼ばれていた。

酷いイジメだった。

なのに少年はしゃんと背中を伸ばし、真っ直ぐに青空を見上げているのだ。

けして泣かない。

何をされても折れない背中が眩しかった。