ハルジオン。

(もういいや)

二転、三転と土手を転がり落ちながら、達也は思った。

(ママは、父さんに殺されたんだ)

あの時の祖父の言葉を思い出していた。

細かいことは分からない。

ただそれでも、幼い達也には祖父のその言葉だけが耳について離れなかった。

--父さんが殺した。

ママを、殺した。


「きっと僕も殺されるんだ」

それはふいに沸いた言葉だった。

声に出すつもりなんてなかったのに、出した途端急に怖くなった。