達也は一歩後ずさった。

はっきりとは思い出せない。でも、どこか見覚えのある光景だった。

境内を囲むクヌギや楡の木々、古めかしくも手入れの行き届いた寺、

そして、門から伸びる石段……

その石段を小さな子供が登ってくる。どうやら母親と一緒らしい。

『……あ!』

思わず達也は目を見開いた。

他でもない。それは自分と母逸子の姿に違いなかった。

『馬鹿な……』

達也は石段を登る二人の姿を目で追い、それから慌てて自分の体を見下ろした。