(七)


それは、あっという間の出来事だった。

二人はぐんぐんと空を飛ぶうちに、蛍らしき光に揺れる森が眼下に見下ろせるほどにまで近づいていた。

「……落ちるぞ!」

達也が短く叫んだかと思うと、突然風の音が止み、揚力を失った。

フワリとした心地よい浮遊感が消え、服ごと内蔵を引きずられるような重力の感覚に全身が包まれる。

「う……わあああ!」

たまらずアキトは叫んだ。

同時に視界が一変した。

水平に流れていた景色すべてが夜空に向かって吹っ飛んでいく。

落ちる!

アキトは必死に手をバタつかせた。

しかし、その手は虚空を掴むばかりで、いっこうに落下は止まらない。