ハルジオン。

達也の中で、古い古い子供の頃の記憶が蘇ってくる。

転校を間近に控えた小学三年の春。

それは、初めて父・篤史にこの場所と木登りの楽しさを教えてもらった日の、遥か遠い記憶だった。

木登りを覚えても、達也はみんなから「もぐら」と呼ばれ、ウザがられ、人気者にはなれなかった。

でも……


『うわあ!凄い!……ねえ、どうやって登るのか僕にも教えてよ』

『へへ、いいだろ。父さんに教えてもらったんだぜ!』


たった一人だけ友達ができた。

それが、靖之だった。