ハルジオン。

……くッ

ひっくッ……

頭の上から、アキトのしゃくり上げる声が聞こえる。

なおも黙ってトランプを拾っていると、達也の視界にアキトのボロボロのスニーカーが見えた。

「返せ！」

達也の手からトランプを引ったくり、ぐしぐしと腕の裾で目尻を拭う。

達也は地べたにしゃがみ込み、散らばったトランプを必死にかき集めているアキトを黙って見つめた。

――ザワ

すっかり帳の降りた森の中を、一陣の風が吹き抜ける。

不意に達也は、森の探検のスタート地点となった愛染窟と、その傍らにそびえる大木を見上げた。