「死ぬ前に、息子のために何かしてやりたいとは思うんだがね」

どうもダメだ、と言葉を濁す。

アキトは首を振った。

「大丈夫だよ。オジサンならきっと螢の泉にたどり着けるよ」

「はは。だといいがな」

「行けるさ!」

「じゃあこうしよう。もし俺が泉にたどり着けたら……」

「着けたら?」

「……そうだな」

そこまで言ったきり、旅人は目の前にある大木をジッと見つめ、もう一度アキトの頭を優しく撫でた。