(三)


多紀連山の稜線に茜色の太陽が沈み、山肌に馴染むように紺色の空があたりを包み込んでいく。

「……まずいな」

達也はその様子を森の木々の合間から見上げ、呟いた。

相変わらず腕時計の針は朝の六時を指したまま動かない。

それでも昼間なら、太陽の高さからおよその時刻を推し量ることができた。

が、夜になるとそうはいかない。

アキトが言うには、螢の森に居られるのは夜の十二時まで。


「タイムリミットまで、あと約五時間ってところか」

達也は足を止め、いっそう静けさを増していく森の奥を見渡した。