鍵が壊れた扉がグラリと開き、そのまま小屋の中に倒れ込む。

ムンと立ちこめるカビ臭い匂いに、百合子は篤史とのことを思い起こした。

達也の顔が脳裏をよぎる。

「百合子」

あらわに捲れたスカートからのぞく太股を凝視しながら、翔が足を踏み入れる。

「ダメ、翔」

後ろ手をつき、弱々しく首を振る。

「……ゆり」

ジリジリと後ずさる百合子を見下ろし、翔が山車の影から姿を現した。

目が狂気に歪んでいる。

あの時の篤史もそうだった。まるで獲物を狩る野獣の目だ。