「なあ百合子、いいだろ?」

「……うん」

言ってしまってから後悔した。

いつもそうだ。

震える手で電話を切ってから後悔したってもう遅い。

百合子は重い体を引きずり、ユニットバスの洗面台の前に立った。

「ひどい顔」

今にも泣き出しそうな鏡の中の自分の姿を見つめ、肩を落とす。

髪をとく気にも、リップを引く気にさえなれない。

「馬鹿な私」

何度も何度も同じ過ちを犯して、誰かを傷付けて、自分も傷ついて、それでもまた同じ事を繰り返す。