「……話が、あるんだ」

四ヶ月前、成人式を終えた百合子が電話に出ると、翔が思い詰めた声で切り出した。

「何?」

「電話じゃちょっと……今からそっちに行ってもいいか?」

「……え」

百合子は返事に窮した。

あの日、翔に首を絞められた夜以来、百合子は一度も出社していなかった。

もちろん、翔とも会っていない。

年が改まれば、辞表だけを置いて帰ろうと考えていた。

それですべてが終わるはずだった。

翔とも。

今の暮らしとも。