(二)


百合子は鳴りやんだ携帯をバッグから取り出し、時間を見た。

"pm06:11"

約束の時間まで五十分もある。


『話があるんだ』

頭の中で、今朝聞いた靖之の真剣な声がリプレイされる。

百合子は携帯を握りしめた。

『電話じゃちょっと……』

心が騒ぐ。

『……今日の夜七時に八坂神社まで来て欲しいんだ』

耐えきれずに蹲る。

その目は、行き場を失った捨て猫のように虚空を見つめていた。