ハルジオン。

「お前まだ小二だろ?夢の一つくらいないのかよ?」

「……オジサンは?」

「あ?」

「オジサンの願い事って何なのさ?」

「俺?……」

達也は言葉に詰まった。

蛍の森が小学校で噂になっていた頃、神社や地蔵の前を通るたびに考えたことがある。もっともそれは子供の頃の願いであって、じゃあ今は?と聞かれて即答できるような答えなどあるはずもない。

「……もしも」

黙り込んでしまった達也から足元に視線を逸らし、アキトが呟いた。

「もし願いが叶うんなら、僕は早く大人になりたい」

「大人に?」

「……」

それっきり口を閉じたアキトを見つめ、達也は小石を川面に投げ込んだ。