「“プリメーラ”みんな何て言ってるか知ってる?」
『…さぁ?』
私が知るわけが、ない。
学校にも来てなくてスタジオ、家、たまに社長宅をぐるぐるしていた私はなにも知らない。
「…仁菜と翔は付き合ってるんじゃないかって…」
『…あ?』
その言葉はカフェオレを口に運んでいた手をも止めた。
「学校中の噂だよ。プリメーラに出たエキストラも言ってるし、スタッフも言ってるらしーから」
『…何を?』
「翔も仁菜も1人だと無愛想だけど、2人で撮影の時は穏やかだって…」
そのちひろの話になんで今日いつも以上に、好奇の視線に晒されていたかが、わかった。
…本当に面倒くさい。
ずっとミルクティーに向けていた視線を私に向けたちひろ。
その視線に耐えながらも『…演技だから』と告げたけれど彼女は何を思ったのか更に
「芸能人同士の恋愛って隠さなきゃいけないから大変みたいだけど…」
盛大に勘違いをしていた。
ちひろってこんなだっけ?と疑問に思ったけれど、私と恋愛トークなんてした事なかったわけだから、こんなちひろを見るのが初めてなのは仕方ないのかもしれない。
…面倒くさすぎる。
すぐに恋愛に結びつけるのってなんで?
そんなんじゃないって言ってんのに…
私が恋愛なんて今までにした?
「だからっ!付き合ってるんなら隠さないで教えてよっ!私、人に言ったりしないからぁっ…」
なんて大真面目に言うもんだから、ふつふつと湧き上がる怒りをつい私も珍しく大声でちひろにぶつけてしまった。
『演技なんだけど!』
ガタン!立ち上がった私の手には衝撃で倒れたカフェオレがこぼれていた。


