「うっ…」


「あ、やべっ!!私今からデートだったんだぁっ!」



狼狽えるガミさんを余所に珠璃は前半を素で、後半を猫かぶりな声で言って立ち上がった。



…自由だね珠璃は。
変装なんてしてない珠璃はどこからどう見ても“要珠璃”で彼女を纏うオーラは芸能人そのものだった。



「デート!?ちょっ…珠璃!お願いだからこれ以上私に仕事増やさないでっ!?」



私のスキャンダルネタを珠璃に見せて「お願いだからパパラッチには見つかるな」とか言っちゃうガミさん。


デート自体はOKらしい。
昔のアイドルみたいな事は言われない私達にとって、今の芸能界とやらは随分と楽だった。



ただスキャンダルは勘弁なガミさんは、珠璃にあれこれと変装グッズを手渡していたけど、それを軽くあしらった彼女に私は問いかけた。



『…また…?』


「またって何だよ“また”って」


そのまんまだよ。
またデートなのかって意味だよ。



私の顔を見た珠璃はニッと笑った後に「心配すんな。次は大丈夫だ」とか何とか言って颯爽と事務所を後にした。



事務所には「本当に写真だけは勘弁してね…」というガミさんのか細い声がやけに響いていた。