「ねぇ、仁菜さん?」
『……』
「アタシ言ったよね?翔君に手出したら何するかわかんないって」
私の携帯を地面に投げ捨て、再び近寄ってくる杏里ちゃんの表情は酷く冷たい。
パシンッ
左頬に熱が籠もる。
杏里ちゃんは私を見下ろし、容赦なく平手打ちを喰らわせた。
「おい、杏里…」
再び殴ろうとした杏里ちゃんの手を掴んだのは、金髪の男。
…助けて、くれた?
「康弘、まだいたの?もうアンタに用はないんだからもう帰ってよ」
「………」
「帰れって言ってんの!アンタとアンタの親が路頭に迷ってもいいのっ!?」
杏里ちゃんに怒鳴られた康弘と呼ばれた男は、何も言う事なくこの部屋を後にしてしまった。
脅しとも取れるその言葉。
…間違ってる。
彼女はいろいろと間違ってると思った。


