『……杏里ちゃん』
ポツリ呟いた私の声が響く。
いつから知ってた?そんな疑問は今はどうでもいい。
杏里ちゃんは私から距離を取り、ポケットから徐に何かを取り出す。
「“10時には終わるから”“今日仕事終わったら仁菜の家行くから”“迎え行くから待ってろ”…」
杏里ちゃんが手に持っているのは紛れもなく私の携帯…
冷ややかな目を携帯に向けて読み上げるのは、他でもない翔からのメール…
10時には終わるからってのは…多分最後に翔が送って来たメール。
いくらなんでも私が帰ってないとなれば翔だって異変に気づくはず…
それに、局にはガミさんも榎本さんも亜美奈も残ってた。
だけど場所までは…
「気付かないから」
『…え?』
「それぞれにメール送っておいたから」
思索する私に少しの希望をも打ち砕く様に杏里ちゃんは、冷たい言葉を落とす。


