顔が熱い。
目頭が、熱い。
榎本さんは私に手を伸ばしたかと思えば―…ポツリ
「…面倒くせぇ」
『…………え?』
呟いた榎本さん。
私を一気に引き上げて、バシャバシャ漆黒の海から出る。
意味がわかりませんが。
面倒くさいって、落としたのは榎本さんじゃんか。
なんでそんな理不尽な言葉を吐かれなきゃならないのか。
睨みたい。
…いや、睨んだ。
だけどこんな暗い場所で睨んだ所で、彼には届かない。
再び砂浜を歩き出した榎本さんに続き歩くけれど―…
あれ?
フラリ、フラリ…
上手く歩けない。
前を歩く榎本さんはいきなりクルリ、振り返って―…
「お前―…」
何かを言った。
それは私の耳に最後まで届く事なく
そこで私の意識はプツリ、途絶えた。
「…酔っ払いはお前の方かよ」
―耳元で何か聞こえた気がした。


