ジャブジャブジャブ
私が、榎本さんが、動く度に水が跳ねる。
『榎本さん!酔いすぎですよっ!』
「酔ってねーよ」
嘘でしょうっ!
酔ってなかったら、こんな行動しないでしょうっ!
榎本さんは何故か私の手を引っ張る。
それを押し返す様に私も引っ張り返すけど、力の差は歴然で、私がズルズルと漆黒に呑まれて行くばかり。
榎本さんの冷たい手が、少し気持ちよく感じる。
『…モッチー?』
「殺すぞ」
おぉぅっ!
すっごい低い声出したっ!
間髪入れずに言った榎本さんは、そのままズルズルと私を引っ張り―…
バチャンッ!
いきなり手を離した。
全身に広がる水の感触と、ペタリ髪が頬に張り付く感じ。
『……………、』
意味がわからない。
けれど自分がずぶ濡れになった事だけはわかる。
見上げても榎本さんの表情は見えなくて。
ポチャリ、私の髪から水滴が海へと還る。


