「グイっと飲め〜」
「マジ勘弁して下さい」
「モッチー人付き合いも仕事の内だ!飲め!!」
嫌がる榎本さんを余所に、盛り上がる周りのスタッフ。
それを肩越しに見てから
『ねぇ大河』
「んーどーしたー?」
がやがやとする店内で、他の人に声が聞こえない様に大河の耳元に近寄り
『さっき、泉杏里って言ってたよね…?』
気になっていた事を口にした。
「あ?あ〜…」
大河は歯切れ悪く言葉を濁し、再びお酒を煽る。
大河はお酒が強いのか、全く顔色が変わっていない。
『…なんだったの?』
「……なんでもねぇよ」
『嘘』
絶対嘘だ。
大河はグビグビとお酒を飲み「嘘じゃねぇ」呟く。
だったら何で私を見ないの?
大河の視線は宙を向いたまま、彷徨っている。
杏里ちゃんを気にしない日なんてない。
信じるのとそれはまた別物だ。
しかも大河から出た名前。
余計に気になる。


