『杏里ちゃんが、怖い』 翔を取られてしまうんじゃないか、と。 あのトイレでの杏里ちゃんは少なくとも本気だった。 何をするかわからないと言った杏里ちゃんの目は真剣だった。 自分が何かをされる。 もちろんそれも怖い ―だけど それ以上に 翔が私の元から去ってしまうのが、怖い。 『翔を信じてないわけじゃないの』 多分私は翔がいなくなったらもうダメな気がするから。 だからなのか 『ただ漠然とした恐怖がある』 拭えない。 信じる気持ちに纏わりつく恐怖心。