「仁菜」
『…ん?』
翔の声が車内にぽつり落ちる。
「俺は仁菜が好きだ。お前以外見てねぇし、他の奴は女に見えねぇ」
『…うん』
頭をぽんぽんと撫でながら、翔が甘い言葉を紡ぐ。
安心を覚えると同時に、胸がドキドキと高鳴りだす。
『…ねぇ、翔?』
「ん?」
『翔は背が低い子が好きなの?』
杏里ちゃんが言った嘘だとはわかっていても、どうしても聞いてしまう。
翔がそうだったら、杏里ちゃんに翔を取られてしまうかもしれない…
そんな不安が拭えなくて、ぽつり口を開いてしまう。
「…なんだそれ?泉に言われたのか?」
『…うん』
翔は私の目をジッと見ていて、その顔は真顔。
だけどすぐにふっと顔を緩めた。
「俺が好きなのは仁菜だって言っただろ?背が低いとか高いとか関係ねぇよ俺は“仁菜”が好きなんだから」
ぎゅっと抱きしめられて、耳元で好きを連発する翔にドキドキしてヤバい。
「泉が何言っても信じるな。俺だけ信じろ」
そう言った翔に『うん』と言って自らキスをした。
私は翔を信じるよ。


