「バカ」
話を聞き終えた榎本さんが言った一言。
目から溢れる涙は榎本さんの袖口に吸収されている。
乱暴に目を擦るから目がヒリヒリして痛い…
「まずに、だ。翔がんな事あの女に言うわけねぇだろ」
『…』
「お前は自分の惚れた男の事もわかんねぇのか?」
『…』
「わかるだろ?あいつがお前をどんだけ好きかくらい」
『…』
『それとも何だ?そんな事もわかんねぇのに付き合ってんのか?なら別れろ。今すぐ』
『…嫌』
私のその言葉を聞いた榎本さんは口の片端を持ち上げ「なら翔を信じろ」続けた。
確かに言われてみれば少し考えればわかる事。
昨日あれほど冷たくあしらっていた翔が、そんな事言うわけがないんだ。
恋は盲目とはよく言ったものだ。


