揺られていた車が静かに停止し、自分の膝一点を見つめる私に、困惑気味の榎本さん。
もっと怒るかと思った。
あの…初めての日の様に。
カチッと音がしたかと思えば、榎本さんのタバコの匂い。
「質問変えるわ。お前、泉杏里と何があったんだよ?」
『…え?』
まさか出て来ると思わなかった彼女の名前。
視線を膝から榎本さんに向ければ、ハンドルに両手を乗せこちらを向く彼。
「杏里がトイレから出た後、お前が慌てて出てきたって聞いたんだよ。それからだろ?お前がおかしいのは」
『…』
「何があったか言え」
榎本さんの目が、私を逃さないと言っている。
ギラギラとした強い眼差しに、私の小さなダムは意図もたやすく決壊する。
『…杏里ちゃんが―…』
誘導される様に私は話した。
いつから私は榎本さんに、こんな弱みを見せるようになったんだろうか…?
気付けば目からは涙が流れていた。


