『私と…あの人を置いて…死んじゃったの』



思い出すのは母を亡くしてより酷くなったあの人からの暴力で…



殴られた痕なんてもうないのに、身体中が…疼く。



『それから…私毎日っ…あの人に………虐待され、て…』


「…っ」



身体が異常に震えてるのが、わかる。
だけど、翔がきつく抱きしめてくれるから。



『…私が11歳の時…その人急におかしくなって……私の服をっ』


「仁菜っ!もうっ…いいからっ…」



翔は私の身体を反転させて自分と対面させた。



翔と交わった視線は逸らせなくて、だけど私はもう泣いてなくて…翔が泣いていた。



翔の目尻をスッと拭って私は、少し微笑んでみせた。



聞いてって意味を込めて。