残された、私と先輩。


「逃げ足だけは一流だな」


「…そうですね…」


「瑠璃ちゃんのことになると、俺…なんかおかしくなるわ」



先輩は独り言のように呟いた。



「ごめん。怖かった?」

「い、いや、そんなこと―――。いつも私ばっか助けられてて…。迷惑かけてて」


"ごめんなさい"


心のなかでしか言えなかった。
なぜか先輩には素直に言えない。

なんでかな。


そんな自分が嫌。


「―――そんなことねぇよ、俺こそ"自分の女"みたいに瑠璃ちゃん仕立てちゃってごめんね」


先輩は隣でくしゃっと笑った。


「本当にそうなれば、嬉しいんだけどね」



って先輩は私の頭を撫でながら言う。


――――反則だよ。
いつもなら"何するんですか!先輩!"とか言って反抗するのに。


そんな気にはならない。
ううん、なれないんだ。



「瑠璃ちゃんどうしちゃったの?いつもなら騒ぐくせにー!先輩嬉しいな」



少し動揺している先輩。

でも嬉しそうにはにかんでる先輩。



「え、どうしちゃったの?塞ぎこんで。元気ねぇよ?」


心配で、私の顔を覗き込んでる先輩。


――――………。


本当はずっと前から―――。

私、自分のキモチに気づいてたのかも知れない。


でも、それを認めたくなかったんだ―――。