「僕は手相できませんよ。タロットならできますが。」
「マジでか。今度見てほしくれ。最近ついてないんだ。」
「分かりました。これからよろしくお願いしますね。」
「うん。よろし…く!?」

五十殿君は私の手に唇をあてた。チュッという音が鳴る。
手にキスされた。英語で言うならIt kisses the hand.
女子達の「キャー!!」という声がクラス中に響き渡った


「うわぁぁぁぁあぁぁっぁああ!?」
私は机から立ち上がった。椅子と机が見事こけた。
顔が湯でダコのように赤くなるのが分かった。いや、茹でダコ以上かもしれない。
「え、どうしたんですか!?」
「ちょ、おま、何するんだ!!!」
「…挨拶ですけど。問題ありましたか?」
五十殿君はおどおどしている。日本でも手にキスは当たり前と思っていたのか!?



しばらくするとジョニーが呟いた。
「ごごごごごごごご、ごじゅうとの!日本では手にキスはしないんだぜ!?」
「え!?そうなんですか!?す、すすすみません桐山さん!!」

キーンコーンカーンコーンと一時間目終了のチャイムが鳴る。
だが、うちのクラスはチャイムの音ではなく、女子の声と男子の声でほとんど聞こえない状態だった…。







五十殿君は申し訳なさそうにこっちを見てる。
イギリスの風習だか常識だか知らんが、手にキスされた!!
恥ずかしい恥ずかしい!!!他のクラスもなんかこっち来たし!!
私は声に出せず、赤くなったまま、立っていた。






こいつ…なんなん!?