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「西!」
教室でスコアの確認をしているあたしに平岡君は声をかけた。クラスマッチが開催されているこの2日で、随分日に焼けた気がする。腕にはマジックで"絶対☆優勝"の文字。平岡君のクラスはなかなか団結力があるらしい。
「今日放課後仕事?」
「ううん。これで終わり。残りは大介にやらせる」
「ははっ、そっか。ならさ、帰り一緒に帰ろうよ。俺も丁度部活休み」
「うん、いいよ。」
「やった!じゃあ、帰り迎えに来るよ」
笑顔でそう言うと、彼は急ぎ足で教室を出ていった。丁度バレーの優勝決定戦が行われている時間だからだろう。彼のクラスは決勝まで勝ち進んでいたはずだ。
「ふぅ~ん?しっかりラブラブじゃないですか?」
彼の背中を見送るあたしに、英里はシャーペンをくるりと回しながら呟いた。あたしは小さく「まあね」と返し、スコアのチェックに取り掛かる。
「いいの?」
「何が?」
「裕太だよ」
「言ったじゃん、もうどうでもいいって」
グラウンドから歓声が上がる。サッカーの試合が行われていた。
「どうせ未来なんかない恋でしょ。なんかバカらしくなっちゃってさ。せっかくの青春、そんな恋で真っ暗にしたくないし」



