「お茶をお入れ致しましょうか?」
「ありがと。っていうか梨華さん、もっと崩した口調でいいよ?なんか堅苦しい......」
「も、申し訳ございませんっ!」
「いや、謝ることじゃないんだけどさ」
ペコリと思い切り頭を下げる梨華さんを、あたしは慌てて起こした。
「まさみさんも他の人達も結構ラフな感じだしさ、梨華さんもそんな気張ることないよ。気楽にしていいから、ね?」
「は、はい......ありがとうございます」
梨華さんは最近入った新しいお手伝いさんだった。まさみさんよりひとつ先輩だった香織さんが歳のために辞めたので、代わりにお父さんが雇ったのだ。
短大を卒業したばかりの梨華さんはまだ20歳で、家のお手伝いさんの中では断トツで若い。梨華さんはそれを気にして緊張しているみたいだけど、あたしはお姉ちゃんができたみたいで少し嬉しかった。
だからなるべくは、気負わないで話して欲しいのだ。
まだ緊張した面持ちで紅茶を入れる梨華さんを見ながら、そんな関係になるのにはまだまだ時間がいりそうだな、と感じた。



