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「あら、お嬢様!お帰りなさいませ。今日は早いお帰りですね」
玄関に迎えに出てくれたのは、いつものまさみさんじゃなく梨華さんだった。
少し幼い顔立ちにポニーテールがよく似合う。嫌味の様な台詞に聞こえるかもしれないが、梨華さんにそのつもりがないのはよくわかっていた。
とても純粋な人なのだ。
「うん、今日は学校から直で帰ってきた。まさみさんは?」
「来栖さんは本日、お休みをとられていらっしゃいます。お子様の入試の日だとか......」
「あ、そっか。そういえば今日だったね」
まさみさんの娘さんは今年大学受験だった。普段我が家に泊まり込みが多いまさみさんは、娘さんにあまり構ってあげられていない。だから何かある日は、なるべく休みを取り家に帰るようにしているのだ。
お父さんもその事はよくわかっていて、まさみさんが休みを求めた時に断ることはなかった。それだけまさみさんは信頼されているのだ。



