ホタル




……………

一人で入ると狭く感じるのに、裕太と入ると不思議と狭く感じなかった。

お互いの髪を洗いあって、シャボンでふざけあったりして、それはまるで、昔の幼い二人みたいで。

何も考えずにいようと思った。今の幸せは、何があっても今の幸せなんだから。


天井から落ちる雫石が、湯船の中にピチャンと落ちる。
その度に一度裕太の鼓動が途切れるけど、すぐにまた、居心地のいい鼓動が耳に届いた。

裕太の胸に、背中を預ける。
あたしはこの体制が、多分一番好きだ。


「…思い出すね」

うっすらと白んだ浴室に、裕太の声が響く。

「何を?」
「二人で行った旅行。あの時もこうやって、朱音を抱き締めてた」

「混浴はなかったけどね」、冗談っぽくそんなことを言う裕太に、あたしはちょっとだけ笑った。

「…あの夜本当は、朱音を連れ去りたかった」

少しずつ真剣な口調になる裕太に、あたしも少しずつ表情を固くする。