……………
夜風は思いの外冷たかった。このままいくと、春が来る前に夏になってしまいそうだ。
カーディガン羽織って来ればよかったな。そんな事を思いながら、軽く両腕をさすった。
ピーマンと…そうだ、牛乳もきれてたな。そうするとやっぱ、少し遠くなるけどスーパーに行かなきゃな。
頭の中に必要な食品を並べるが、静かな夜の中に一人落とされると、どうしても気持ちが落ちてくる。
大学は楽しかった。気の合う仲間もいるし、勉強もそれ程苦痛じゃない。何より誰かといる時は、笑っていられたから。
それでもどこか浮いていた。地面に足がついてない様な、言葉が宙をさ迷う様な、そんな感覚によくとらわれる。
多分、何かが足りないのだ。あたしの中の、何かが。
それが何かなんて、考えなくてもわかってる。わかってるけど敢えて、気付かないふりを繰り返してきた。
そうやって今、ようやく四年目の春を迎える。
相変わらず、足りないものを心の奥底で求めながら。



