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「あ、ピーマンないや」
冷蔵庫を開けてそう呟いたあたしを、ゲームに熱中していた二人が振り返る。
「あるあるって思ってたらなかった。ちょっと買ってくるよ」
「ピーマンなくちゃダメなの?俺嫌いなんだけど」
「内田が嫌いなら尚更なくちゃダメ。あたし大好物だし」
エプロンを取りながら嬉しそうにそう言うあたしの前で、内田は「そうやって朱音はいつも俺をいじめるんだ」と膝を抱えた。
大の男がそんな格好をしても可愛くもなんともなく、適当に無視して財布を握る。
「俺買ってこようか?」
「あ、いいよ。鈴川君は内田の相手してやってて」
「すぐ帰ってくるし」、そう言ってあたしは一番履きやすいミュールに足をはめた。
「ピーマンなかったら諦めていいからな!」
そんな切実な内田の願いを再び聞き流し、あたしは回鍋肉の匂いが充満した部屋を後にした。



