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大学四年目にもなると、学校に行く日より行かない日の方が圧倒的に多くなるのが大多数だと思う。もちろんあたしも例にもれず多数派で、今日なんか多分、学校が始まってから二回目のご出勤だ。
別に講義やゼミがあったわけでもなく、ただ出し忘れていた書類を届けに来ただけだけど。
「おっ、珍しい顔が見える!」
教務科のある校舎を出た所で、思い切り声をかけられた。
がさつに手を振り回すその人を見て、軽くため息。
「あ、何だよそのため息」
「だって久々に学校に来たら内田の顔でしょ。ため息もつきたくなるよ」
「ひでぇなぁ」と彼、内田昌文は大袈裟に肩をすくめてみせる。
内田とは語学が一緒で知り合い、今では月末に夕食をたかられる仲だ。勿論一方的に。
彼は一、二年で大分授業をサボっていたから、今日も多分若い子達に混じって必修講義を受けてきたのだろう。
手にはあたしが随分前にしまった英語の教科書があった。



