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「煙草の吸い方、かっこいいよね」

ただぼんやりと窓際で吸っていただけなのに、そう言われてあたしは少し驚いた。

「そう?」
「うん。普段朱音って明るくて綺麗でクールとは程遠いイメージだけど、煙草吸ってる時だけなんかかっこいい」

それ誉めてるの?苦笑いしながらあたしは煙草を消した。立ち上がって水を飲む。煙草の味がして、少し苦い。

「なぁ、今日泊まってっていい?」
「だめ」
「わかってて聞いたんだよ」

よっと立ち上がって、彼は小さく伸びをした。
床に置いた鞄を手にとる。

「昨日まで英里子ちゃん達が泊まりに来てたんだろ?寂しいんだと思って来ただけだし」

嫌味にならない様な爽やかな言い方に、あたしは思わず笑って「さすが鈴川君だね」と返した。

「じゃあ帰るね」

あっさりと手を振り、彼は家を出ていった。
キッチンの冷蔵庫にもたれながら、あたしも軽く手を振る。

バタンとドアが閉まる音と同時に、あたしは軽く息をついた。