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朝の光より前に耳に慣れない音が体に響いた。
遠くで引いては寄せる波。つられる様に、あたしは目覚めた。
しんとした空気。春の朝はまだ寒い。でも体の芯が冷えるのは、多分それが理由じゃない。
寄りかかって寝ていたはずのあたしの体は、いつの間にか柔らかな布団の上に横たわっていた。
そしているはずの愛しい人の姿は、もう隣にはなかった。
驚きはしなかった。多分、目が覚めたらいないことは頭のどこかでわかってたから。
立ち上がり窓を開ける。朝の潮風が、待ちわびた様に部屋に入ってきた。
波の音が一層響く。
目を閉じたら、砂が流れる音まで聞こえてきそうで。



