「愛してる」
その言葉が、多分部屋の中で固まった。
目を見開いたままのあたしは、裕太を見上げる。
精一杯の裕太は、全身であたしを見つめていた。
静かに、ただ涙を流す。
瞬きをすることも忘れた。
眉を寄せると同時に、あたしは裕太を抱き締めた。
痛いほどに裕太も抱き締め返す。
何を言うわけでもなく、あたし達はただ抱き締めあっていた。
『愛してる』
それは世界で一番嬉しい言葉なはずなのに、今のあたし達にとっては一番切ない言葉で。
あたしは言えなかった。
それを言ったら本当に終わりな気がして、ただ腕に力を入れるしかできなくて。
言えなかった。
裕太を愛してるって
あたしには勇気がなくて、言えなかった。
『愛してる』
世界で一番愛しい人の、世界で一番許されない愛の言葉。
それが今、あたしの耳に残る、最後の裕太の言葉。



