ホタル



裕太はそっとあたしの頬に手を伸ばして、あたし達は小さく口付けた。
ゆっくりと、名残惜しむ様なキスを繰り返す。
ひとつキスをする度に、これが最後なんじゃないかと怯え、そうしたくなくて何度も何度も繰り返した。

体の奥で叫んでる。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
裕太と離れたくなんかない。

こんなにも、こんなにも好きなのに。

それはまるで幼い子どもの様なシンプルな感情で。

あたし達はそれが赦される程、もう子どもじゃないのだ。

子どもじゃ、いられないのだ。


「…朱音」

唇を離した裕太は、あたしを呼んだ。

嫌だ、呼ばないで。
心のどこかで、あたしが叫ぶ。


終わりにしたくない。