ホタル



溶けたい。
深く、深く、裕太と一体に。
誰も傷付けない。誰も文句なんて言えない。

あたしと裕太が元々ひとつだったら、それは幸せだと言えるのだろうか。


裕太の腕を握りしめた。最後かもしれない裕太の体温を、全身に染み渡らせる様に。

「…幸せだよ」

涙のせいで、少しだけくぐもった声。でも精一杯、あたしは笑った。

「あたしはずっと、幸せだよ」


…それがお互い、精一杯の強がりであることは痛い程にわかってた。

裕太の幸せがあたしの幸せだって心から言える程に、あたしは強くも優しくもなかった。

自分の涙にさえ嫉妬する程、あたしは裕太を求めてる。

他の子が裕太を幸せにするなんて、考えること自体を全身が否定してる。

それでもあたし達は、そう願うしかなかった。


お互いを思いやってるわけじゃない。
今のあたし達が願う本当の幸せは、きっと二人だけの世界に行くことだ。
あたしと裕太しかいない。躊躇うことなく、裕太を好きだと言える世界。

ただそれを、この世界が許さないだけ。

だからあたし達は、離れるしかないの。



狂おしい程に、あなたが好きでも。