「湯冷めするよ」
肩にふぁさっと丹前がかけられた。振り向くと、同じ様に風呂上がりの裕太がいた。裕太は浴衣一枚で、この丹前は裕太が羽織っていたものなのだろう。
「ありがと」
「海見てた?」
裕太が横に並ぶ。
「うん。真っ暗だけど」
「でも俺、夜の海の方が好きだ」
あたしも、そう答えると、裕太は少し視線を流して笑った。
笑顔が大人びたと、思う。
その笑顔に、胸が高鳴る。
「露天風呂、どうだった?」
誤魔化す様に言った。裕太は視線を海に戻す。
「凄い気持ちよかったよ。天気いいから、星も見えたし」
「いいなぁ。贅沢だね」
「朱音も朝入るといいよ。朝は女風呂だし、朝風呂で露天風呂のほうがよっぽど贅沢だ」
確かにそうだねと小さく笑い、裕太も同じ様に笑った。
あたし達の笑い方は似てると思う。
それは恋人同士が似てくる類いのものとは少し違う。ただ単に、同じ血が流れているからだ。
そういえばお父さんも、こんな笑い方だった気がする。
思い出せない程に、彼の笑顔を見ていないけど。



