…「あ。これズルだよ」
「え?」
「これ。シッポまで身が入ってない」
夜ご飯のエビフライを裕太に見せた。かじった先から見えるのは、エビフライの半分くらいしかない小さなエビで。
「ははっ、ちっちゃ」
「ん~やっぱ安いだけあるね」
裕太もエビフライに口をつけて、「ほんとだ」と苦笑い。それを見てあたしも思わず笑った。
静かな春の夜に、あたしと裕太の笑い声が響く。
…海辺にあるこの小さな旅館。
裕太がピックアップした中で一番安かったけど、あたしは海辺という立地に魅力を覚えてここに決めた。
家には二人とも、友達の家に泊まると言ってある。日頃の行いがいいからか、誰もそれを疑わなかった。
不思議と、罪悪感はなかった。



