……………

「気に入った?」

ドサッと荷物と畳の触れる音。あたしはゆっくり振り返る。

「うん。…海が見える」
「行ってみる?」
「…も少ししてから」

そっか。そう言って裕太は、あたしの隣に座った。
窓際に2つの影。

あたしはそっと、裕太の肩に頭をもたれる。

裕太はそっと、あたしの手を握る。

頭から、耳から、頬から、裕太の温もりが伝い、あたしはここが一番居心地のいい場所なんだと改めて実感する。


窓の隙間から潮の香りが迷い込んだ。小さな雫石の音まで染み込んでくる。

こんなにも穏やかな時間の流れがあったことを、あたしは初めて知った。