……………

ゆっくりと瞼の隙間からオレンジの光が射し込んだ。
目の前に見える景色は今まで見たことのない新緑と青のコントラストで、うっすらと窓に写る自分がそこに似つかわしくなく浮かんで見える。

「もうすぐ着くよ」

ぼんやりと夢と現実の間をさ迷うあたしに、裕太が声をかけた。あたしは窓から目を離し裕太へと視線を動かす。

「…どれくらい寝てた?」
「二時間弱かな」
「昨日寝れなかったからかな…」
「眠かったら寝てていいよ。着いたら起こすから」

あたしは座り直して、首を横に振った。

「ううん…起きてる」

あたしの斜め上で、裕太が落とすように微笑んだ。あたしは裕太の手を握る。

少しでも長く、裕太を感じていたい。
側にいる、裕太を。

電車がガタンと揺れた。
つられて二人の足元にある、制服の入った紙袋が揺れる。

何を話すわけでもなかった。
今更話すことなんて重要じゃなかった。

ただ隣にいることだけが、何よりも大切だった。