あたしの手を取った裕太は、そのままあたしを引き上げる。
立ち上がったら裕太の瞳が近くなり、あたしの心臓は速くなる。
何も言わない。
何も言わないまま、ただ裕太はあたしを抱き締めた。
苦しい程に切なくて泣きたくて、ぎこちない仕草で裕太の広い背中に手を伸ばす。
胸一杯に、裕太の煙草の残り香を吸い込んだ。
どうしよう、愛しい。
「…朱音」
耳許で裕太が呟いた。
「お願いだから…一人で抱えようとしないで。小さなことでも構わないから、俺を頼って」
それはまるで懇願の様に聞こえて。裕太のこんな声、初めて聞く。
視界が滲む。
「一人で寂しい道を選ばないで。二人で寂しい道を、選んで」
裕太の腕に力が入った。比例する様にあたしの表情も歪む。
堪えきれずに、裕太の胸の中で泣いた。
…それは多分、とても辛くて。
寂しさも苦しさも、1人で感じる方が辛くない。
裕太がそれを感じてると思う方が、辛い。
でも、それでも願ってしまう。
…一緒にいたい。



